地域で共に支えてくださる皆さまへ

いつも大変お世話になっております。
ファミリーヘルスクリニック北九州の進谷です。
日頃より、地域の医療・介護・福祉に関わる皆さま、地域の診療所の先生方、病院で働く医療職の皆さま、そして地域で暮らす皆さまには、患者さんやご家族の暮らしを支えるために、多くのお力添えをいただいております。
まずは、心より感謝申し上げます。
僕が地域医療に強く向き合うようになった原点の一つに、急性期病院での経験があります。
急性期病院で命を救うことはできた。
でも、その方の「家に帰りたい」「食べたい」という想いを叶えられなかった。
そして、その想いを叶えたいと願っていた病院の仲間たちの想いにも、十分に応えることができなかった。
その経験から、これからの社会に本当に必要なのは、どんな困りごとを抱えていても、生活の場で支えられ、支え合える地域社会なのだと感じるようになりました。
病院での医療、診療所での医療、訪問看護、介護支援、福祉、地域の支え合い。
どれか一つだけで、患者さんやご家族の暮らしを支え切ることはできません。
だからこそ、医療や福祉がこれまで以上に地域に溶け込み、暮らしを支えるインフラになっていく必要があると感じています。
生活の場では、健康問題は特別なものではありません。
病気や障害、老い、認知症、介護、看取りは、生活の中に当たり前に存在しています。
だからこそ、医療と福祉を縦割りで考えるのではなく、生活そのものを支える協働の分野として、もう一度組み立て直していく必要があると思っています。
そして、その協働の中には、医療福祉専門職だけでなく、地域で暮らす方々の気づきや見守り、日々のつながりも含まれていると思っています。
もちろん、専門的な判断や医療的な責任は、僕たち専門職が担うべきものです。
ただ、生活の場での小さな変化に最初に気づくのは、ご家族やご近所の方、地域の中で日々関わっている方であることも少なくありません。
僕たち専門職は、そうした地域の自然な支え合いを大切にしながら、必要なときにきちんと専門的な支援につなげられる存在でありたいと思っています。
医療福祉専門職同士の関係も、単なる「紹介する側」「受ける側」、「依頼する側」「対応する側」ではなく、同じ地域を支える仲間として、互いの役割を尊重しながらつながっていくことが大切だと感じています。
病院には病院の役割があります。
診療所には診療所の役割があります。
訪問看護には訪問看護の強みがあります。
ケアマネージャーには、生活全体を見ながら支援を組み立てる大切な役割があります。
薬局、訪問リハビリ、介護事業所、地域包括支援センター、行政、そして地域で暮らす方々にも、それぞれの力があります。
その力がばらばらに存在するのではなく、必要なときに必要な形でつながる地域にしていきたい。
患者さんやご家族が困ったときに、「どこにもつながれない」「誰に相談してよいかわからない」とならない地域にしていきたい。
僕は、そう思っています。
今、ファミリーヘルスクリニック北九州では、
「誰もが大切なものを大切にしながら、最期まで暮らしていける社会にする」
という理念を掲げて、外来診療、在宅医療、地域事業を組み合わせながら、日々の実践を重ねています。
もちろん、当院だけでできることには限界があります。
むしろ、当院だけで完結させようとは思っていません。
これから必要なのは、一つの医療機関が頑張ることではなく、地域全体で支える仕組みをつくっていくことだと思っています。
開業して4年が経ち、当院も少しずつ体制が整ってきました。
次のステップとして、北九州市、まずは八幡地域を一つの医療福祉協同体と見立てて、この地域にとって本当に必要なことを、皆さまと一緒に実践していきたいと考えています。
その中で、当院は地域の医療福祉をつなぐハブ、そして学び合い・育ち合う教育のハブの一つになれたらと思っています。
ただし、これは当院が中心になるという意味ではありません。
地域の中にあるそれぞれの専門性や役割が、よりつながりやすくなるための結び目の一つでありたい、という意味です。
病院から在宅へ。
在宅から外来へ。
外来から地域資源へ。
介護から医療へ。
医療から福祉へ。
専門職から地域へ。
そして、地域から専門職へ。
そうしたつながりが、もっと自然に、もっと温かく、もっと実効性のあるものになっていくように、皆さまと一緒に考え、動いていきたいと思っています。
そのうえで、絶対に忘れてはいけないことがあります。
それは、
一番そばにいる方を大切にすること。
目の前の方を大切にすること。
地域全体の仕組みを考えることは大切です。
でも、僕たちの仕事の原点は、いつも目の前の一人です。
目の前の患者さん。
目の前のご家族。
目の前で悩んでいる専門職。
目の前で困っている地域の方。
その一人ひとりを大切にすることなしに、地域を支えることはできないと思っています。
ただ同時に、目の前にはいないけれど、どこかに確実にいる、まだ手が届いていない人のことも考え続けたいと思っています。
相談できずにいる人。
支援につながれずにいる人。
病院にも在宅にも地域にも、うまく接続できずにいる人。
そして、その人を支えたいのに、どうつなげばよいか悩んでいる専門職やご家族、地域の方。
そういう人たちに、どうすれば手を届けられるのか。
どうすれば、支える側も孤立しない地域にできるのか。
そのことを、皆さまと一緒に考え続けたいと思っています。
地域医療も、在宅医療も、介護も、福祉も、一人ではできません。
それぞれの専門職が力を持ち寄り、地域で暮らす方々の力にも支えられながら、ようやく形になっていくものだと思っています。
だからこそ、これからも互いに相談し合い、学び合い、時には率直に意見を交わしながら、この地域にとってより良い医療福祉の形を一緒につくっていければと思っています。
いつも本当にありがとうございます。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。
ファミリーヘルスクリニック北九州 院長 進谷 憲亮